口内フローラと歯周病との関係
一生懸命、歯を磨いているのに、歯茎の出血が止まらない、歯周病がなかなか改善しない。
その理由は、口内フローラ(歯周ポケットの細菌叢)に原因があるのかもしれません。
口内フローラを調べて、歯周病の治療や予防を考えてみませんか?
今までの歯周病の考え方
今まではプラークが、多いか少ないか、"プラークの量"が重要だと考えられていました。
なぜならプラーク中の詳細な細菌の種類を一人ひとり調べることができなかったからです。
・プラークの細菌はどのひとも同じで、成熟とともに同じように変化する。
・プラークが多いと病原性(歯肉の炎症)が高い
・プラークが少ないと病原性(歯肉の炎症)が低い
つまり歯周病を治すためには、歯を一生懸命磨くことが重要だと考えられていました。
この考え方は歯周ポケットの細菌の種類を詳細に把握できるようになったことで、大きく変わりつつあります。
新しい歯周病の考え方
新しいメタゲノム解析の応用により、一人ひとり持っている細菌の種類が大きく異なっていることが分かってきました。
そして、一人ひとりの歯周ポケットの細菌叢(フローラ)と歯周病の状態を比較して調べたところ、
プラークの多い・少ないは、歯肉の炎症の強い・低いとは関係がないということも分かってきました。
つまり
・プラークが多くても病原性(歯肉の炎症)が低い細菌叢がある
逆に
・プラークが少なくても病原性(歯肉の炎症)が高い細菌叢がある
ということです。
大事なことは、プラークの量ではなく、プラークの”質”なのです。
プラークの多い人は歯を適切に磨くことでプラークの量を少なくすることができます。
しかし、プラークを少なくしたからといって、歯肉の炎症が改善するとは限らないのです。
これは、歯科医院での歯周病の治療にも当てはまります。
歯科医院で時間をかけて歯石・プラークを除去してもらっても、
細菌叢が改善しないと
必ずしも炎症が改善するとは限りません。
大事なことは、プラークの細菌の”質”なのです。
そしてプラークの質を科学的・客観的に評価できる方法がメタゲノム解析なのです。
歯肉の炎症を改善するために大切なこと
歯周病の治療と予防において、大事なことは"口内フローラの改善(歯周ポケットの細菌バランスを大きく変えること)”なのです。
その方法としては、
・適切な抗菌薬の併用
・抗菌成分の入った歯磨き粉、うがい剤の常用
・乳酸菌などプロバイオティクスの摂取
・適切な食生活
などが考えられます。
しかし、どの方法が適切か、どんな種類の製品か薬品が適しているのか、それは口内フローラの質によって大きく変わってきます。そして、口内フローラの細菌種類やそのバランスは、一人ひとり大きく異なっています。
そのために、まず自分自身の口内フローラ・歯周ポケットの細菌バランス、細菌の種類を調べて、把握することが重要です。
口内フローラに応じた改善策を考える
一人ひとり細菌バランスは大きく異なります。
そのため、一人ひとりの細菌叢に応じた、抗菌薬や抗菌ジェルを選択する必要があります。
もちろん、完全に解明できている訳ではありませんが、まずは口内フローラの細菌バランスを知ることが重要です。
口内フローラを調べ歯周病のリスクを考える
最先端のメタゲノム解析を行うことで、口腔内に生息する細菌の種類を詳細に把握できます。
そして歯周病に関連する細菌(健康な人からも検出されますが)の種類やその割合、数から
歯周病のリスクを考える一つの材料にできます。
歯周病の早期発見・治療と予防に
歯周病の早期、歯肉の炎症の初期の段階で、細菌叢は変化を始めています。
特に悪い細菌種(Red-complex)とは違う細菌種が変化し、その後、Red-compexが大きく増加してきます。
より初期の細菌叢変化をいち早く検出することで、歯周病の早期発見・予防が可能となります。
また症状は無くても潜在的に存在する細菌種を把握すれば、リスクの評価にもつながります。
歯周ポケットの炎症と細菌バランス
病原性(歯肉の炎症)が高い細菌バランス Red-complexはもちろんのこと、その他の重要な細菌が高い割合を示しています。 この状態で放置していると、やがて歯がグラグラし、歯周病で歯を失う可能性が高くなります。すぐにでも歯科医院で歯周病の診断と治療を受けて下さい。 また通常の歯周病治療では効果が得られにくい可能性があります。その場合は、歯周病学会のガイドラインに基づいて抗菌薬(抗生物質)を併用した治療が有効かもしれません。 |
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病原性(歯肉の炎症)が中等度に高い細菌バランス Red-complexも増加することもありますが、それ以上に軽度の炎症を引き起こす細菌が増加しています。歯肉のむくみや歯磨き時の出血などが引き起こされます。細菌種類によっては重症化するリスクが高い場合があります。 抗菌薬はあまり有効ではありません。細菌バランスに応じた、適切な抗菌ジェル・うがい剤を使用するのが良いでしょう。改善が難しい症例もあります。 |
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病原性(歯肉の炎症)が低い細菌叢 Red-compexのような細菌が検出される場合もありますが、問題を起こさないような細菌が多数を占めています。 積極的な殺菌は必要ないのではないでしょうか。プラークコントロールをしっかり行いましょう。 |
病原性の高い細菌バランスは単に歯をきれいに磨いてもなかなか歯肉の炎症が改善しません。病原性を低くするためには、適切な抗菌薬や抗菌ジェルなどの補助が必要となります。
ここまで詳細に調べられるのは最先端のメタゲノム解析だけです。
抗菌薬による口内フローラの変化
谷口歯科医院で、抗菌薬を併用した歯周病治療をしたときの歯周ポケットの細菌バランスの変化です。
病原性が非常に高かった細菌叢でしたが、治療により病原性が低くなっています。
右下の小さい円グラフで、青が多いほど治療後の予後が良い傾向にあります。
抗菌薬の併用療法でお口の中の細菌バランスがどう変化したかを調べられます。
・抗菌薬の投与によりRed-complexが減ることはもちろんですが、
全体としての病原性のレベルがどの程度まで下がったのか確認できます。
・治療後に炎症が再発する可能性もあります。細菌叢を把握しておけば、
どの細菌が再び増えて再発したのかが明確になり、その後の対処法にも効果的です。
ただし。抗菌薬の投与によりお口の中からは50~70種類の細菌が失われることになります。
もちろん、失われる細菌の多くは悪い細菌です。
しかし、今まで無視されてきただけであって、大事な細菌を失っているかもしれません。
安易な抗菌薬投与はできるだけ避け、本当に必要な症例を見極めて用いるべきだと考えます。
そのためにも、細菌叢を詳細に調べることが重要なのです。
口内フローラについて気になる方、チェックして欲しい方は
こちらの歯科医院にお尋ねください。
メタゲノム解析では、細菌の種類やバランスを報告するものであり、病気の診断やどのような治療を推奨するかについては触れることができません。歯科医師とよく相談の上、治療方針を決定してください。細菌叢についてご不明なことがありましたら、谷口歯科医院までお問い合わせ下さい。
また治療内容よっては保険適用外になりますので、治療の際には歯科医院の先生とよく相談してください。MetaDentProjectでは自由診療を推奨しているわけではありません。